えらぶ23
障子から赤い夕日が差し込んでいる。
差し込んだ光は部屋に二つの影をつくっていた。
和室に響くのはしゃかしゃかと茶をたてる音。
二人の間にある空気は清冽な水のように清々しい。
立ち込める畳と茶の匂いが心を和ませる。
「はい、どうぞ」
こうして見ているとやはり茶道部だけあって手馴れている。
座布団に正座し、出されたお茶に口をつける。
それは食い過ぎのせいで体が水分を欲していたからか、世辞抜きで本当においしかった。
湯飲みに満たされた緑茶は瞬く間に飲み干された。
「ご馳走様です。本当においしかったです」
「またまた。でもお世辞でもうれしいですよ」
葵は頬を紅潮させ、こほん、と軽く咳をして恥ずかしそうに照れている。
「いえ。自分は言う事ははっきりと言います。不味ければ不味いと言います」
きっぱりとした口調で断言する。
確かに緋影は言うべきことは口に出す人物だ。正直すぎるから、毒舌だと言われることもある。先程の食事の時に『嫌がらせじゃないのか』と言わなかったのは自分を誘ってくれた大竹の面子をたてたのと、葵が本当に好意で自分達に奢ったと判断したからだ。
今では、面白半分で奢ったのではないか、と疑っているが。