ぶ25
「催眠術が使えればこの場をうまくごまかせるかと思ったんですが。あ!催眠術が使えれば学食も無料でもっと食べられますし……催眠術、使えるようになれませんかねぇ」
彼女は心底残念そうに緋影以上にがっくりと肩を落とした。
「もっと食べるって……先輩、昼間にあんな一杯食べたじゃないですか?」
「その、あの、私はですね!」
「あれだけ食って足りないって言うんじゃ……大食いチャンピォンになれますよ」
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
一際大きな腹の虫の音が和室に響く。音の発信源は茹蛸のように真っ赤になり、恥ずかしそうに俯いている。
「あ、あれで足りないんすか?」
呆れ声にも発信源はただただ俯いているだけだ。
「ぷっ……はははっ!」
「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですかっ!」
「す、すんません。つい、あまりにもおかしくて」
疑り深い自分が心の底から笑うだなんて事は滅多にない。
本当に遠慮なくげらげらと腹を抱えて笑い続けている。
対照的に葵はむ〜、とした表情で緋影を睨んでいた。
「じゃあ、先輩、お茶と学食のお礼に、今度は俺が何か奢りますよ」