茶室

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うらぶ29

うらぶ29

ろれつ呂律が段々と怪しくなってきている。これはまずい。

緋影は強引に缶を奪い去ろうとするが、

「んっ!」

その一瞬の隙をつかれ、口元に缶ビールが葵の手により運ばれていた。そして中身はそのまま喉へ流し込まれる。ごく、ごくっ、と緋影の喉はうまそうな音をたてていた。

「い〜飲みっぷりですね〜」

缶の中身がなくなると、葵はへらっ、とくだけた笑みを洩らした。

「な、何するんすかっ!」

酒に酔った彼女の理性はすでに飛んでいるのか、

「この際です、じゃんじゃん飲みましょう〜!」

次々と缶ビールのプルタブを開け始める。

止めようとする緋影だったが、酒にあまり強くない彼が一気にビールを飲まされたせいか動きは緩慢だ。その緩慢な動作を葵はなんとか避けている。緋影よりもアルコールに強いのか、酔いが醒めつつあるのか、あるいはその両方か。

葵は緋影の手を掻い潜ってうまそうにぐびぐびとビールを飲み始める。

彼女の動きは今の自分では阻止出来ない。

なら、飲まれる前に自分が飲めばいい。

緋影はそう考え、自分から開けられた缶ビールを飲み始めた。

冷静に考えるのであれば、そのビールを台所なりどこなりに捨てる方がよっぽど効率的なのだが、そうしなかったのはビールがもったいなかったからか、酔った彼の思考ではそこまで考えが回らなかったからか。それは酔いが醒めた後の緋影自身にもわからない謎であった。

「ははは〜、いい飲みっぷりです〜、深山君〜。今日は徹底的に飲みましょうっ〜!」

缶ビールを握り締め、親父臭いセリフがオンボロアパートに響いた。